会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2025/11/13
営業所を開設した際の安全衛生管理体制の考え方

坂本工業では、来年4月以降、他県の都市部で営業所を開設することを計画している。そこで、木戸部長はその際の安全衛生管理体制について社労士に相談することにした。

 今日は安全衛生管理体制のことで質問があるということでしたね。

 はい。実は、当社では他県に営業所を出すことを予定しています。これから人材の募集を行っていくことにしていますが、順調に人材が確保できれば営業社員2名と事務スタッフ1名が常駐する予定です。様々な体制整備をしなければならないと思っているのですが、当社で開催している安全衛生委員会も、この営業所で別途開催が必要なのでしょうか?

 そうでしたか。安全衛生管理体制に関してまず押さえておくべきことは、適用が事業場の規模や業種によって異なるということです。それではまず事業場の定義を確認しましょう。

 事業場ですか。法人としての「企業」で考えるわけではないのですね。

 はい。会社としては、取扱いを企業単位としたいところですが、労働基準法・労働安全衛生法では多くの場面で「事業場」が単位となります。この事業場の判断においては、主として同一の場所か、離れた場所かということによって決定すべきとされており、同一の場所にあるものは原則として一つの事業場となり、場所的に離れているものは原則として別個の事業場とされています。

 なるほど。今回、営業所を他県に出すことになっています。場所的に離れていることから別個の事業場と判断されるのですね。

 基本はそのとおりです。しかし、これには例外があり、場所が離れていたとしても営業所の規模や事務能力等を勘案した結果、独立した事業場ではないと判断される場合、営業所の直近上位と一括して一つの事業場として取扱うことになります。

 今回、営業所は営業社員2名と事務スタッフ1名の計3名の予定で、営業活動の指示は本社の営業部長から出し、勤怠の管理なども本社で行うことになると考えています。

 そのような実態から考えると、一つの事業場といえる程度の独立性がないものと判断され、直近上位の本社に含めることになりそうですね。

 なるほど。営業拠点を開設した場合であっても、必ずしも事業場として単独で取り扱うということにはならないのですね。

 その通りです。現段階では、営業所について本社に含めることになりそうですが、今後、従業員数が増え、そこで労務管理がなされるようになれば、安全衛生管理体制の整備が必要になります。

 当社は製造業に該当しますが、営業所の人数が増えた場合、営業所も安全管理者などの選任が必要になるのでしょうか?

 業種については、事業場ごとに判断します。そのため、貴社の場合、本社と工場が一体となっていますので製造業になりますが、営業所は「その他の事業」に該当することになりますね。

 これも、事業場単位で考えるのですね。

 はい。将来的に営業所の人数が増えて、常時使用する労働者の数が10人以上49人以下になると衛生推進者を選任し、50人以上になれば衛生管理者を選任することになります。

 事業場の定義、業種の考え方を理解しておくことが重要ですね。

>>次回に続く



 今回は、営業所の開設を例に取り上げましたが、支店、工場など、名称に関わらず、あらゆる事業場についても取扱いは一緒になります。この際、事業場の労働者数には、管理監督者から、正社員、パートタイマー、アルバイト、さらには育児休業や私傷病により休職している従業員を含めてカウントすることになります。
 また、企業によっては派遣労働者や出向者を受け入れているケースでは、例えば本社の人数が45名で、派遣労働者や出向者を入れると50名以上となる場合、派遣労働者、出向者ともに人数を含めてカウントし、事業場の労働者数が50名以上となるのであれば、業種に基づいて衛生管理者・産業医等を選任するなどの対応が必要となります。

■参考リンク
厚生労働省「総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医のあらまし
厚生労働省「事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」はどのように数えるのでしょうか。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。




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基本給、外的報酬、きまって支給する給与、休業補償、降格降職、拘束時間、コミッション制、雇用安定資金を執筆
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