会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2025/01/09
時間単位の年次有給休暇を導入する際の手続き・注意点

坂本工業では、来年4月から、時間単位の年次有給休暇(以下、「時間単位年休」という)の導入を検討している。そこで、社労士に導入する際の手続きや注意点を確認することとした。

 今日は、時間単位年休のことで質問があります。従業員から時間単位年休を導入してほしいという要望が強く、2025年4月からの導入を検討しています。導入する際の手続きや注意点を教えてください。

 わかりました。時間単位年休を導入する場合は、就業規則への記載と、労使協定の締結が必要です。労使協定では、以下の事項を定める必要があります。

  1. 時間単位年休の対象者の範囲
  2. 時間単位年休の日数
  3. 時間単位年休1日分の時間数
  4. 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数

 まず、「1.時間単位年休の対象者の範囲」については、時間単位年休を取得できる対象者を定めます。

 当社の場合、工場勤務者は交替制のため、対象外とすることも可能ですか?1日単位での取得は、人員を調整して対応することはできますが、その時間だけとなると調整が難しいことがあるため、対象外にできるのであれば検討したいです。

 労使協定で交替制の工場勤務者を対象外とすることは可能です。ただし、社内的な不公平感が生まれやすくなりますので、その説明は丁寧に行う必要がありそうですね。次に「2.時間単位年休の日数」については、法令で1年について5日以内の範囲と決められています。一般的には5日とする例が多いですが、上限を2日や3日とすることも可能です。

 そうなのですね。

 次に「3. 時間単位年休1日分の時間数」については、1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げることになり、例えば、所定労働時間が6時間30分の人は、1日分の年次有給休暇に相当する時間は「7時間」になります。

 ということは、もし1年のうち5日取得できるとした場合、この所定労働時間が6時間30分の人は、時間単位では35時間分(所定労働時間を切り上げた7時間×5日)取得できることになるのでしょうか?

 そのとおりです。所定労働時間6.5時間×5日と計算するのではありません。最後の「4. 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数」については、多くの場合、1時間単位の取得としていますが、2時間単位とすることも可能です。

 なるほど。1年について5日、時間は1時間単位になると思っていましたが、ここは労使協定によって変更できるのですね。

 時間単位年休の運用に関して、特に注意して欲しいポイントを2点お伝えします。1点目は、年次有給休暇が10日以上付与された労働者について年5日の年次有給休暇を取得させることが義務となっていますが、この取得の5日に、時間単位年休を含めることはできないことです。

 時間単位年休とは別に5日の年休を取得しなければならないということですね。この点については、社内からも年5日取得できるのかといった心配をする声がありました。ただ、通院などのために1時間だけ休みを取りたいという声もあることから、時間単位年休を導入したいと思っています。

 2点目は、次年度の年次有給休暇を付与する際の繰り越しについてです。時間単位年休を導入すると、繰り越し時期に、時間の端数が出ることが考えられます。例えば残日数が7日と3時間となった場合、次の付与を行った際、7日と3時間をそのまま繰り越すか、3時間を1日に繰り上げて、「8日」とし、繰り越すことが必要です。

 3時間を切り捨てることはできないということですね。

 はい。従業員の方にとって有利な取り扱いをすることは可能ですが、切り捨てるといった不利な取り扱いはできません。また、7日と3時間を繰り越し、例えば次の基準日に11日を付与した場合、18日と3時間になりますが、時間単位で取得できる範囲は1年において5日とした場合、35時間(所定労働時間7時間×5日)が限度となります。

 なるほど。38時間(所定労働時間7時間×5日+3時間)にはならないということですね。

 そのとおりです。運用についても考えていくと、細かな注意点があります。まずは、今回の内容を踏まえて検討いただいて、また状況を教えてください。

 わかりました。

>>次回に続く



 今回は、時間単位年休を導入する際の注意点をとりあげましたが、ここでは、同じ時間単位で取得できる子の看護休暇・介護休暇との違いについて補足します。
 時間単位年休は、始業時刻前、終業時刻前、勤務時間の途中で取得することができ、例えば休憩時間とつなげて取得することができます。一方、子の看護休暇・介護休暇は、法令では始業時刻や、終業時刻につなげて取得することになっており、いわゆる中抜けは認める必要はありません(法令を上回る措置として会社が認めた場合は勤務時間の途中で取得することができます)。同じ時間単位で取得できる休暇であっても、取り扱いが異なることに注意が必要です。

■参考リンク
厚生労働省「新しい働き方・休み方が始まっています。時間単位の年次有給休暇を導入しましょう!

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。




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基本給、外的報酬、きまって支給する給与、休業補償、降格降職、拘束時間、コミッション制、雇用安定資金を執筆
東洋経済新報社


第2章「労働時間性」〜
第6章「年次有給休暇」を執筆
労働調査会

労働・社会保障実務講義
第5講「労働条件 賃金・労働時間」を執筆
第1講「序論 社会保険労務士とは」を共著
早稲田大学出版部

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特集1「時間外労働の上限規制」を執筆
社労士専門誌「SR第50号」(日本法令)

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巻頭「労働基準法改正と働き方改革」を執筆
社労士専門誌「SR第48号」(日本法令)

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